こわい。
何で、どうして。意味分かんない!
ERRORに似た女の子の絵を見てから、嫌な予感がしてならない。怖い。嫌だ。
他の物なんかもう見たくなくて、出口を求めて急いだ。
数分後、前方に扉を見つけて勢いよく外に出れば、眩しさに思わず目を覆った。いっぱい瞬きをして、漸く目が慣れると恐る恐る手を下ろして、そして絶句する。
目の前には、あの大きなお屋敷がそびえ立っていた。
「う、わぁ……」
遠目に見ただけでも豪華だってことがよく分かったけど、近くで見ると半端じゃない。
けど、何て言うか。
「………何か、やだなぁ」
無駄にゴテゴテしている気がする。ここまで飾り立てる必要があったのかと聞きたくなるくらいには、キツイ。庶民な私にはとんでもなくキツイ。
あぁ、何か無性にモビーに帰りたい。
「……早く街に戻ってERROR達と合流しよう」
それで、いっぱい笑うんだ。ERRORとエース君と、あとサッチさんも。お土産いっぱい買って船に戻って、リサとマルコさんにも分けてあげて、それで、皆でいっぱい笑うんだ。
お姉さんの過去とか、さっきの怖い通路とか、ERRORそっくりな絵とか、とにかく全部忘れたかった。
イゾウさんにくっついて、ロナン君からかって、マルコさんの隊の副隊長も巻き込んで。
これからのことを考えれば、沈んでいた気分が少しだけ浮上する。
よし、帰ろう。早く帰ろう。街へ急ごう。
さっきよりも軽くなった足取りで街へ向かって歩き出して数メートル。
「え、ちょっ……待ってください、アタシ、街に……!」
何処かから聞こえてきた声。困ってるようなその声、物凄く聞き覚えあるんですけど……!!
「ERROR……?」
呟いた直後、走り出す。
豪華な屋敷をぐるりと囲む塀に苛々しながら、漸く角を曲がった。
その先――門をくぐり抜けようとしているその姿を見つけて、ポカンと口を開いた。
「ERROR、だよね……?」
見間違いじゃない、はずだ。服装だって同じだったし、髪型だって。
見間違いじゃない。ERRORだ。さっきの声だってERRORと同じだった!気がする!!
「ERROR!」
叫んで、走り出して。
無駄に大きいから門までの距離が半端じゃない。苛々する。だって、何でERRORが?
「――ERROR!!」
漸く辿り着いた門のところには、衛兵らしきお兄さんが二人。それらしい服を着て腰に剣と銃を携えたお兄さんたちがジロリと睨んできて、思わずたじろぐ。
「あ、あのっ」
「………」
「さっきの子、何があったんですか?」
「………」
お兄さんたちは何も言わない。
閉ざされた門の向こうに見える玄関はもう閉まってるから、ERRORの姿は見えない。
「さっきの子、私の知り合いなんですけど、ERRORが何か――」
「知らん」
「は?」
漸く口を開いたかと思えば、お兄さんは素っ気ない声でそう言い放った。
「知らん、って……いや、だから――」
「誰も通ってない」
「………はい?」
何言ってんの、この人?
通ってない?いやいや、嘘じゃん。通ったじゃん、ERRORが。ついさっき。
「ERRORが何かしたんですか? それとも――」
「ERRORという人間など、通っていない」
「何でよ! たった今ここに入ってったでしょう!?」
「誰も通ってなどおらん」
「バカな事言わないで!! 私見たんだから! ERRORが通ったでしょう!?」
何度問い詰めても、お兄さんたちは誰も通ってないの一点張り。
埒が明かない。いっそ屋敷に突入してやろうか。きっとマルコさん辺りに知られたらとんでもなく怒られる上に拳骨されることを考え始めたその時。
プルルルル
辺りに鳴り響く電伝虫の音。
お兄さんがポケットから子電伝虫を取り出せば、静かな声が聞こえてきた。
『何事だ』
「先程通った女を出せ、と」
数拍の間を置いて、また声が返ってくる。
『追い返せ。引かぬようなら――殺せ』
「な……っ!」
「承知しました」
承知すんな!!
叫ぶ私を無視して電伝虫をポケットに戻すと、お兄さんたちは腰に携えた剣に触れながら私を冷たく見下ろした。
「引くか、死ぬか。選べ」
「――っ、」
悔しいけど、まだまだ未熟者な私じゃ勝てるか分からない。
相手の力量すら見極められない私が、勝手なことをするわけにはいかない。
踵を返して街へ向かう背中に視線が突き刺さって、それが無性に腹立たしくて。
何も出来ない自分が悔しくて。
「っ、バーーーーーカ!!!!」
振り返って思い切り叫んで、街までダッシュした。