「ねぇ、何かあったんでしょう?」
閉め切られたカーテンに話しかける。
「教えて欲しいの、貴方の力になりたいのよ」
けれど、カーテンの向こうにいる親友からは何の返答もない。
悲しみに目を伏せたリリーは、とぼとぼと部屋を出て談話室へと降りていった。
「どうだった?」
談話室に入るなり声をかけてきたジェームズに、リリーは力なく首を振る。
そうか……。呟いたジェームズの声にも覇気がない。
「何かあったに違いないのよ」
「分かってる。僕だってそう思うよ、だっていくら何でもおかし過ぎる」
ルーシーがおかしくなったのは、母に呼び出されて家に帰ってからだ。
ホグワーツに戻ってきて、それからすぐにあんな風になってしまった。
スネイプと別れて、リリーたちと距離を置いて。
昔の明るいルーシーが嘘のよう。今は殆ど表情を変えることなく、ただただ日々を過ごしている。
あまりの変わりように誰もが驚いて、何があったのかとリリーやジェームズたちに問いかける。
答えを持っていたら、どんなに良かったか。
答えを知りたいのは、自分たちの方だ。
何度もルーシーに話しかけて、無視されて。
漸く振り向いてくれたと思ったら「うざったい」「話しかけないで」「しつこい」と辛辣な言葉を投げ付けられる。
何か理由があるはずだ。
そうであって欲しい。
頼むから、そうであってくれ。
縋るような思いで話しかけて、無視されて。心無い言葉を返されて。傷ついて。
「母親に何か言われたんじゃねぇのか?」
シリウスの出した意見に、リリーは首を振った。
そんなはずはない。だって、ルーシーの母には会ったことがある。とても優しくて、温かい人だ。
ルーシーがあんな風に変わってしまうことを望むはずがない。
「じゃあ他に何があるってんだよ」
「それが分からないから悩んでるんじゃない!」
カッとなって声を荒げれば、落ち着いて、とジェームズがリリーの肩を叩く。
「ごめんなさい……だって、もう……何が何だか分からないのよ」
滲んだ涙がぽたりと落ちる。
こんな風に、ルーシーの気持ちも目に見えれば良いのに。
「セブも……今日会ったのに、全然話してくれない……」
目が会ったのに。
幼なじみはリリーを認識したはずなのに。
すぐに目を逸らして行ってしまった。
今までだったら、軽い挨拶くらいはしていたのに。他愛ないことを話して、じゃあまた、って微笑んでくれていたのに。
優しかった幼なじみはどこへ行ってしまったのだろうか。
優しかった親友はどこへ行ってしまったのだろうか。
泣きじゃくるリリーの頭に、躊躇いがちに手が触れる。
困ったような顔のジェームズと目が合うと、ジェームズが労わるように微笑む。
「大丈夫」
何が大丈夫なのか、ジェームズだって分からないくせに。
「すぐにまた、前のように戻るよ」
根拠など、どこにもないのに。
「だから、泣かないで」
僕と二人きりの時なら大歓迎だけど。こんなに人の目がある中でするのはちょっとね。
ウィンクするジェームズに、何する気よ、なんてリリーも少しだけ笑って。
「一人じゃないよ。僕たちも一緒だ」
あんなにも大嫌いだった男に。
こんな風に慰められる日がくるなんて。
「ありがとう」
仄かに染まった頬を隠すようにそっと顔を伏せた。