ルーシーとスネイプが別れた。
本来なら喜ぶべきその事実に、けれどレイはほんの少しも喜べない。
ルーシーがスネイプをフッた。何故?有り得ない。
有り得ないのだ。だって、ルーシーはスネイプのことが本当に本当に好きだ。
それをレイは誰よりも知っている。ルーシーはスネイプが好きだ。
だって、大好きなレイがスネイプを好きだと知ってもスネイプと別れなかった。それくらいスネイプのことを好きだからだ。
好きで、好きで、どうしようもなく大好きで、それなのに別れたという。
好きで、好きで、どうしようもなく大好きなスネイプを突き放したという。
何故?
答えなど出るはずもない。
ルーシーと別れてからというもの、スネイプは変わってしまった。
まるで入学当時のような――否、違う。もっとだ。スネイプは変わってしまった。
「セブルス……まるで人形みたいよ」
数歩先を行くスネイプがぴたりと足を止めて振り返る。
こちらを見る目はやはり人形のようなそれで、背景とレイの区別がついているのかすら疑わしい。
好きな人にそんな目で見られるのは辛い。伏し目がちになったレイに、スネイプは何も言わず再び歩き出す。
変わってしまった。
感情を表に出さないようにしているだけなのか、麻痺してしまったのかは分からない。
レイだってショックだった。
ルーシーのあまりの変わりように、こっそり泣いてしまった。
「セブルス」
呼びかけても答える声はない。
すぐそこにいるのに、届かない。
あぁ、そうか。
レイは気付いた。
「………ばか」
あんなにも幸せそうに笑っていたくせに。
姉は変わってしまった。
好きだった人も変わってしまった。
取り残されてしまった自分が惨めで、情けなくて。
滲んだ涙を袖で拭って、それでも足は動かない。
追いつきたいのに。
隣を歩きたいのに。
あぁ、どうしてだろう。
今のスネイプの隣を歩きたいとは、どうしても思えないのだ。
あんなにも好きだったのに。
グッと拳を握り立ち尽くすレイの元に一羽の梟がスーッととんできて、咥えていた手紙を落としていった。
足元に落ちたそれを緩慢な動きで拾い上げ、差出人を見る。
「……お母さん?」
何かしら。呟きながら手紙を開いて、目を通して。
そして、レイはその手紙を握り潰した。
「、なんで、そんなの……っ、」
こみ上げる怒りを誰にぶつけたら良いのだろう。
余りにも理不尽な内容に、涙さえ出てこない。
ただただ、怒りがこみ上げて。
ただただ、悲しくて。苦しくて。
”卒業後は日本へ行きなさい”
理由すら書いてない。
それは『お願い』ではなく『命令』だ。
今まで、一度としてそんなことはなかったというのに。
姉に裏切られて、
好きな人を失って。
その上、母にまで裏切られたのか。
どうして。
どうしてどうしてどうして。
グシャグシャに握り潰した手紙を壁に投げつけ、レイはその場にしゃがみこむ。
頭を掻き回して、きつく目を閉じて。
自分が生きてきた世界が全て消え去ってしまったことを思い知った。