「さて、わしはそろそろお暇しようかの」
立ち上がったダンブルドアがカーテンを開ける。ハリーのベッドにはロンとハーマイオニーが来ていた。
「ルーシー! 良かった君も無事だったんだ!」
「ハリーこそ。目が覚めて良かった」
顔を綻ばせるハリーにルーシーも笑顔を返す。その様子を見ていたダンブルドアはにこにこ顔のまま医務室を出て行った。
「大丈夫? こっちに来れる?」
「大丈夫」
そっとベッドを抜け出してハリーのベッドに近寄る。ハーマイオニーが出してくれた椅子に座ると、ルーシー達はハリーから事の顛末を聞いた。クィレルがみぞの鏡の前にいたこと、後頭部にヴォルデモートが寄生していたこと。先ほどのダンブルドアとの話まで全てを語り終えたハリーがルーシーに言った。
「君は? 何があったの?」
今度はルーシーが語った。クィレルを疑ってたこと、フラッフィーの廊下でスネイプと出会したこと、スプラウトの罠で死にかけていたのを助けられたこと、ロンとハーマイオニーと会って、スネイプと二人で先に進んだこと――。
「ルーシー、君いつからクィレルを疑ってたんだ?」
「前にフラッフィーから助けてもらったって話したでしょう? だからスネイプ先生が『石』を狙ってるって信じられなくて……もちろんちょっとは疑ってたけどね。スネイプ先生じゃないならクィレル先生が狙ってるってことになるでしょう? だからどっちの可能性も捨てずにいたの。でもフラッフィーを眠らせて仕掛け扉を降りようとした時にたまたまスネイプ先生が来て、それでクィレル先生だって確信したの」
「そうだったの……」
「でもよくスネイプが一緒に連れてってくれたよな。置いて行かれそうなのに」
「勝手についてくって言ったからじゃないかな。スプラウト先生の罠で死にかけちゃったから、放っておくと野垂れ死ぬとでも思ったんじゃない?」
「無事で良かったよ」
ホッとした様子で笑うハリーにルーシーも笑った。
「じゃあ君は知ってる? ハリーが気を失った後のこと」
「それが、私も覚えてなくて……いつの間にか気を失ってたみたいで、気付いたらここで寝てたの。思い出そうとすると頭が痛くなって……」
「無理しない方がいいわ。今は大丈夫?」
「大丈夫、ありがとう」
「でも変だな」
ロンが首を傾げた。
「だって君はクィレルと戦ったわけじゃないんだろう? 呪いにかかったわけでもないのに」
「うん、私もわけが分からなくて……」
スネイプとダンブルドアは「あの時のことを覚えてるか」とルーシーに尋ねた。つまり何かがあったのだ。ルーシーの覚えていない何かが……知りたいような気がしたが、教えてくれなかったということはまだ知らなくて良いということなのだろう。
「あーあ、クィディッチ残念だったなぁ。出たかった」
途端に三人の顔が曇った。失言だった。
「あー……まぁ、ホラ。来年もあるしね!」
朗らかに言ったルーシーは、三人の表情を見て励ましが逆効果だと気付いたのだった。
「何もするなって言ったじゃないか」
医務室に顔を出したカーラは明らかに不機嫌だった。
「君達が生きていたのは奇跡だ。全部先生達に任せておけばこんな事にはならなかっただろう?」
退院を許されないルーシーとハリーをじとりと見てから「それに」カーラはロンとハーマイオニーを見た。
「君達だって。すぐに退院出来たとはいえ怪我をしたじゃないか。そんなに早死したいのかい?」
「まさか」
「もちろん違うわ。でも、友達を見捨てるなんてしたくなかったのよ」
ロンとハーマイオニーがそう答えたがカーラの表情は冷たいままだ。
「カーラ、心配してくれてありがとう」
「別に心配したわけじゃない。君達があまりにも馬鹿だから直接言いに来ただけさ」
「それより、どうしてマルフォイが? どこまで知ってるの?」
ハリーが訝しげにカーラとルーシーを見る。ロンとハーマイオニーも顔を見合わせていた。
「カーラも気付いてたんだよ。グリンゴッツから盗まれそうになった何かが学校に隠されてるって」
「まさか『賢者の石』とは夢にも思わなかったけどね。あれだけおかしなことが続けば誰だって気付くさ。それで? ちゃんと話してくれるんだろう?」
中途半端に巻き込んだことに腹を立てているのだろうか。じとりと睨むカーラに苦笑してルーシーは全てを語った。話を聞いている間、カーラは終始難しい顔をしていた。
「……まったく、そんな行き当りばったりの計画でよく命を懸ける気になったもんだよ」
「はは……確かにね。今はほんとそう思うよ」
「命を懸ける前に思ってもらいたいよ。……まあ、もしかしたらって思ってたけどね。でもまさか本当に行くなんて」
それはそれは大きな溜息をついたカーラが立ち上がりルーシーの額を弾く。
「イタッ」
「良かったじゃないか。死んだら痛いなんて思えないんだから」
そう言って医務室を出ていくカーラを見送り、ルーシーは笑みをこぼした。
「そうだね……生きててよかった」
「本当に……運が良かったわ、私達」
四人は顔を見合わせて笑い合った。